1.トラウマセラピーの流れ 


 トラウマセラピーは、基本的に感情を扱うセラピーです。症状の原因は、潜在意識に抑圧されたネガティブな感情なので、症状を改善するためには症状の原因となっている感情に気づき、感じて、表現することによって、抑圧された感情を解放する必要があります。
 以下は、トラウマセラピーの基本的な流れです。各段階をクリアーしながら、抑圧した感情を手放し、本当の自分を回復していきます。

【ステップ1】 本当のことを認める
 自分にトラウマがあるという認識のある人は、そう多くはありません。クライアントさんのほとんどが、明らかにPTSDや依存症を発症しているにも係わらず、自分にはトラウマなどないと思い込もうとしています。自分の症状の原因が、過去のトラウマであるということに気づき、勇気をもって事実を認めことが、トラウマセラピーの第1段階です。

【ステップ2】 トラウマセラピーの構造を理解する
 トラウマセラピーは、一般の心理療法(カウンセリングなど)と異なる点がいくつかあります。
その中で最も特徴的なのは、徹底的に過去を見つめて、過去を清算していくということです。
 過去の感情を感じていくことは、とても辛いことです。だからこそ、トラウマセラピーを最後まで(成果が出るまで)取り組むためには、たとえ辛くても過去の感情を徹底的に感じ切る必要性を、深く納得する必要があるのです。

【ステップ3】 感情に気づき、感じ、表現する
 この段階は、トラウマセラピーで最も重要な部分の一つです。しかし、トラウマの強い人は、感情感覚が麻痺(感情麻痺と言います)しているために、自分の感情をそのまま感じ、自由に表現することが苦手です。中には、そのようなことをしたことがないので、最初はできない人も少なくありません。
 この段階では、感情麻痺を解きつつ、抑圧した感情を感じ・表現しながら、過去の感情を解放します。トラウマセラピーでは、この過程が一番辛いところです。このときに、精神的に不安定になることもあります。この状態を『ヒーリングクライシス』と言います。この『ヒーリングクライシス』を乗り越えることができると【スッテップ3】をクリアーすることができます。

【ステップ4】 安心を補給する
 トラウマによって、潜在意識の抑圧されたネガティブな感情を解放していくのは重要ですが、もう一つ大切なことがあります。深いトラウマを持った人は、親から十分な愛情を受けらなかったために、心の中に愛情が不足しているのです。クライアントさんの多くが、この愛情不足の状態を『心の中に大きな穴が空いている』ように感じます。この穴を埋めるために、過食(食依存)・買い物依存・ブランド依存・恋愛依存・セックス依存。アルコール依存などの依存症の人が増えているのです。
 メンタルサポート心理相談室では、この不足した愛情を補給するために、乳幼児期に年齢退行して『安心のワーク』と呼ばれるワークを行います。個人差はありますが、この『安心のワーク』によって、乳幼児期に十分に受けられなかった愛情のエネルギーを補給することができます。

【ステップ5】 親への愛憎の執着に気づき、それを手放す
 依存症の根本原因は、親への愛憎の執着です。この親への愛憎の執着に気づいている人は、あまり多くはありません。PTSDや依存症の症状から開放されて、真に自立するためには、親への執着を手放すことが必要です。憎悪の執着は、怒りや憎しみの感情を開放することで、手放すことができます。しかし、愛着の執着は、愛情の補給が十分に行われないと手放すことは簡単ではありません。

【ステップ6】 人格を統合する
 幼少期のトラウマによって、人格はたくさんの副人格に分裂します。複数の人格が交代することで一貫性を欠き、様々な人間関係でのトラブルを繰り返すのです。
 トラウマによって起こる、副人格の分裂と人格交代の仕組みはとても複雑なので、詳しくお知りになりたい方は、依存症研究所発行の小冊子、『感情麻痺と人格交代』をお読みください。ご連絡を頂ければ、お送りいたします。
 ステップ5までの過程で、抑圧されたネガティブな感情の解放がある程度終わると、分裂した副人格を統合する段階に入ることができます。人格統合によって、主人格が主導権を取ることができるようになり、トラウマセラピーは終結を迎えます。

【ステップ7】
 人格統合が終わると、トラウマによって生じていた様々な症状から次第に解放されていきます。しかし、ここから本当の意味での学習が始まります。この【ステップ7】は、日常生活の中で行うものなので、基本的には一人で取り組んで頂くことになります。勿論、その間も辛いことがあるので、セラピストは支えていきます。
学習とは、『体験によって新しい行動ができるようになること。』と定義されます。簡単に言えば、学習は失敗体験から学ぶことです。しかし、幼少期の親子関係でトラウマがあると、失敗を恐れる習慣(ネガティブプログラム)が身についてしまうので、日常生活では失敗を回避する行動しかできなくなります。もし、失敗したとすると、強い罪悪感や自己否定に入り落ち込んでしまいます。
このようにして、トラウマがあると失敗が学びにならず、自己否定になってしまうので、益々人間関係を避けたり、本当の自分を隠したりして、さらに症状が悪化してしまうのです。
インナーチャイルドの怖れを手放して人格統合が終わると、失敗を怖れる習慣から徐々に解放されていきます。そして、本当の学習ができるような状態になっていけるのです。とは言っても、いままで失敗によって学習するという体験をしていないので、最初はうまくはいきません。この段階の学習は、これから始まるのです。この過程は、失敗や試行錯誤を繰り返しながら、ある程度時間をかけて、徐々に進行します。振り返ってみると、『こんなにラクに自分らしく生きられるようになった。』と実感できるようになると思います。