3.ヒーリングクライシス 

2.の【ステップ3】で、ヒーリングクライシスのお話しをしました。トラウマセラピーでは、ヒーリングクライシスを乗り越えることが、大きな壁になるケースがありますので、少し詳しくお話ししたいと思います。と言っても、ここでお話しするような強いヒーリングクライシスの状態になる人は、少ないと思って下さい。通常は軽くて済むか、ほとんどヒーリングクライシスを感じないでセッションを終える人が大多数です。
 PTSDや依存症の原因は、トラウマによって潜在意識に抑圧されたネガティブなイメージや感情です。では、どうして後に症状の原因となるようなネガティブなイメージや感情が、潜在意識に蓄積されてしまったのでしょうか?
 親から虐待(支配・コントロール)を受けると、幼い子どもの心は非常に傷ついて、ネガティブな感情(恐怖・怒り・憎しみ・悲しみ。寂しさ・絶望など)が生まれます。しかし、幼い子どもは激しい感情反応に耐える力が弱いのいで、自分を守るために感情を麻痺させて、辛い感情を感じないようにしてしまいます。そして、感情を麻痺させながら、感情は感じられないまま潜在意識の奥深く抑圧されてしまうのです。このようにして、感情麻痺と感情を抑圧する習慣(ネガティブプログラム)が一度身についてしまうと、的確なトラウマセラピーでこの習慣を手放さない限り、無自覚な感情抑圧は生涯に渡って続くことになります。
 トラウマセラピーでは、感情麻痺を解きながら、症状の原因となっているこれらの感情を感じて解放しなければなりません。しかし、あまりにも認めがたく辛い過去の感情を感じることは、とても苦しいことです。まして、幼少期から抑圧し続けてきた感情なので、この感情に耐える自我の力も十分には育っていない方もいます。もしこの状態で、過去の辛い感情が一気に噴出してきたら、その衝撃は非常に強いものとなります。この状態がヒーリングクライシスなのです。
 トラウマセラピーでは、過去の抑圧した感情を感じて解放するのが、セラピーの基本的なスタンスだということは何度かお話ししてきました。ですから、ヒーリングクライシスの状態になれたということは、セラピーが順調に進んでいる証なのです。感じなかった過去の感情を、セラピーの過程で感じ切ることで、過去を受け入れて過去を清算できることができるのですから。